世界の人口のうちの約0.25%しかいないユダヤ人ですが、ノーベル賞受賞者の約20%がユダヤ人であり、世界長者番付でも上位にはユダヤ人が多くいます。
そんな優秀なユダヤ人の根幹を作っていると言われているのが『タルムード』という書物で、タルムードの中にはお金や人生に関する哲学を学べる小噺が多数存在します。
今回はタルムードの中から「魔法のザクロ」というお話を紹介します。
前回の『金の冠をかぶった雀』に続き、タルムードシリーズ第二弾です。
なお、タルムードはヘブライ語で書かれたもののみを聖典としているため、他の言語に翻訳されたものについては一部誤訳が入っている可能性があります。
今回の記事では日本語に翻訳された書籍である「ユダヤ人の成功哲学『タルムード』金言集」をもとに要約解説していきます。
あらかじめご了承ください。
魔法のザクロ
あるところに、仲良しの3人兄弟が住んでいました。
成人した3兄弟は10年間各地で修行をすることにし、一人は東に、一人は西に、一人は南に旅立つことになりました。
旅立ちの前に兄弟は、次のように誓い合いました。
「また10年後にこの家で会おう。そしてそれぞれが10年間で自分が見つけたもっとも不思議なものを持ってくることにしよう。」
一番上の兄は東に行き、ある旅人から世界の隅々まで見える不思議なガラスのコップを買った。このコップから世界を見渡すと、本当に世界の隅々まで見えるのです。
長兄はこれが世界で一番不思議なものに違いないと確信しました。
次に二番目の兄は西に行き、ある街で絨毯売りに出会った。
絨毯売りにとある絨毯の値段を聞くと、その絨毯がひとりでに動き始めた。
絨毯売りいわく、この絨毯は生き物で、どこまでも空高く飛んでいくことができるとのこと。
二番目の兄はこれが世界で一番不思議なものに違いないと思い、大金をはたいてその絨毯を買いました。
最後に一番下の弟は南に行き、不思議な森に辿り着きました。
森の奥まで進むと、花がたくさん咲いているのに実がひとつしかない不思議なザクロの木がありました。
ザクロの実に手を伸ばすとザクロは手に落ちてきて、その代わりにたくさんあった花のうちのひとつがザクロの実になりました。
弟はこの木を持って帰ろうとしましたが、そう考えた瞬間にザクロは木ごと消えてしまいました。
なので弟は手元に残ったザクロをひとつだけ持ち帰ることにしました。
そして10年後に再開した3人はそれぞれ持ち帰った不思議なものを見せ合いました。
そこで長兄が持ち帰ったガラスのコップを覗くと、ある国のお姫様が重病でベッドに寝ていて、かたわらで王様が誰か助けてくれと嘆いている様子が映りました。
これをみた3人は、魔法の絨毯に乗ってお姫様の元へと飛んでいった。
そして一番下の弟が、
「これを食べればお姫様の病気がきっと良くなるに違いない。」
とザクロの実を半分にわりお姫様に差し出した。
お姫様がザクロを食べると、顔に精気が戻り力強く立ち上がることができました。
王様は感激し、3兄弟にこう申し出ました。
「お前たちのおかげで姫が重病から回復した。3人のうち誰でも姫と結婚してよいから、3人で話し合って誰が結婚するか決めなさい。」
すると姫が、
「私に質問させてください。」
と言いまず一番上の兄に、
「あなたはガラスのコップで私の重病を発見してくれました。その望遠鏡のようなコップは今も元のままですか?」
これに対し一番上の兄は、
「はい。まったく元のままです。」
次に姫は二番目の兄に、
「あなたは魔法の絨毯で私の元へ駆けつけてくれました。その絨毯は今でも空を飛べますか?」
これに対し二番目の兄は、
「はい。傷もついていませんし、空も飛べます。」
最後に弟に対して、
「あなたは私にザクロの実を食べさせて病気を治してくれました。そのザクロの実は以前と違いますか?」
これに対し弟は、
「はい。お姫様に半分差し上げましたので、今は半分しかありません。」
これを聞いて姫は高らかに宣言した。
「私は一番下の弟と結婚します!彼は私のために大切なザクロを半分失ったのですから。」
魔法のザクロから学べること
この魔法のザクロという物語には、『ノーペイン・ノーゲイン』、犠牲なくして成功なしという教えが込められています。
これは元々エジプトで奴隷となっていたユダヤ人がモーゼに連れられて脱出する際に、携帯できない財産を全て捨てていったという経験からくる教訓をわかりやすく優しく伝えるための物語であり、何かを得るためには何かを失わなければならないというシンプルな世界の理でもあります。
上の兄たちが手に入れた不思議なコップや絨毯も、一度使ったらなくなってしまうものであれば、もしかしたらお姫様を救うために使わなかった可能性があります。
保証がなくても先に大切なものを失うという犠牲を払うことで、より大きなものであったり成功を引き寄せる力となります。
しかし、情報に溢れている現代社会において注意したいのが、その犠牲が本当に自分の意思で払われたものかどうかという点です。
他人から誘導されて犠牲を払っても、その他人の成功を手助けするだけという結果に終わるかもしれないので、あくまでもしっかりとした自身の信念や意思によって選択するようにしたいです。
ということで今回タルムードシリーズ第2弾となる『魔法のザクロ』をご紹介しました。
「ユダヤ人の成功哲学『タルムード』金言集」には他にもお金や人生における物語がいくつか紹介されています。
どれもためになるものばかりなので、ぜひ読んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました!