世界の人口のうちの約0.25%しかいないユダヤ人ですが、ノーベル賞受賞者の約20%がユダヤ人であり、世界長者番付でも上位にはユダヤ人が多くいます。
そんな優秀なユダヤ人の根幹を作っていると言われているのが『タルムード』という書物で、タルムードの中にはお金や人生に関する哲学を学べる小噺が多数存在します。
今回はタルムードの中から『正直な仕立て屋』というお話を紹介します。
前回の『ナポレオンとニシンの話』に続き、タルムードシリーズ第6弾です。
なお、タルムードはヘブライ語で書かれたもののみを聖典としているため、他の言語に翻訳されたものについては一部誤訳が入っている可能性があります。
今回の記事では日本語に翻訳された書籍である「ユダヤ人の成功哲学『タルムード』金言集」をもとに要約解説していきます。
あらかじめご了承ください。
正直な仕立て屋
ある国で大干魃(長い間雨が降らない)が起こった。
作物は全て枯れ、飲む水がないために家畜が次々と死んでいった。
そんな中ある村のラバイ(ユダヤ教の聖職者のこと)が、夢を見た。
夢の中では神がそのラバイに次のように言った。
「次の安息日に服の仕立て屋の主人に祈り台で祈りを捧げさせなさい。そうすれば大地に雨を降らせよう。」
翌朝ラバイはこの夢を思い出したが、その仕立て屋はヘブライ語もあまり読めず聖書もろくに覚えていないのに皆を代表して祈りを捧げさせて良いのかと、その夢を信じなかった。
神への祈りはヘブライ語で行わなくてはならず、当時ヘブライ語はキチンと勉強しなければ読めない言葉だったため、ラバイは今まで通りにヘブライ語を使える人を集めて祈りを捧げさせ続けたが状況は変わらなかった。
ラバイは次の週もまたその次の週も同じ夢を見た。
3度も同じ夢を見たため、これは間違いなく神のお告げだと思い仕立て屋に祈らせることにした。
仕立て屋はいつも使っている巻き尺を持って祈り台に上がると、気負うことなく自分の言葉で祈り出した。
「神様、私は仕立て屋の仕事を始めてもう40年になりますが、ただの一度も人を騙したり、ズル賢い商売をしたことはありません。この巻き尺をご覧になってもおわかりの通り、一分の狂いもない正確な巻き尺を使っております。他の仕立てやはわざと目盛りを狭くした巻き尺で生地を多く使ったように見せて高い値段で服の代金を請求しています。粉屋もわざと秤(はかり)を狂わせて粉を見かけよりも少なく売っています。油屋もそのようなことをしています。私はそのようなことはしていません。どうぞこの私の正直で適正な商売を評価していただけるなら、なにとぞ雨を降らせてくださいませ。」
すると天空に雷鳴が轟き、大粒の雨が降り出した。
人々は歓喜の声をあげ、その雨で国中が救われた。
仕立て屋の起こした奇跡を見たシナゴーグの面々は自分の店に帰り、秤や巻き尺を正しいものに変えたり修正したりした。
これに倣って国中の人が同じことをして、誤魔化したり不正な商売をする者は誰もいなくなった。
これを見た神は毎年同じ時期に雨を降らせ、人々が干魃に悩むことは無くなった。
正直な仕立て屋から学ぶこと
このお話では、正直な生き方にお金は宿るというメッセージが込められています。
ユダヤ人は商売において、『適正さ(フェア)』と『正直さ(オネスト)』で正しい稼ぎ方をしなければならないと教えられて育つため、悪どい商売をしない。
ユダヤには『古い果物の上に新しい果物を重ねて売ってはならない』という格言があり、ズル賢い商売で儲けても自分も家族も幸せにはできない上に、全てを見ている神の怒りを買って不幸を呼び寄せることになる。
私自身もこれは本当にそうだと思います。
人生においてある程度要領よくやるために、多少のズル賢さも必要という意見もあるかと思いますが、商売においては誠実さを大切にしたほうがうまくいくことが多いと感じます。
商売の基礎となる考え方なので、長年ビジネスを続けても忘れないようにしたいですね!
ということで今回タルムードシリーズ第6弾となる『正直な仕立て屋』をご紹介しました。
「ユダヤ人の成功哲学『タルムード』金言集」には他にもお金や人生における物語がいくつか紹介されています。
どれもためになるものばかりなので、ぜひ読んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました!