世界の人口のうちの約0.25%しかいないユダヤ人ですが、ノーベル賞受賞者の約20%がユダヤ人であり、世界長者番付でも上位にはユダヤ人が多くいます。
そんな優秀なユダヤ人の根幹を作っていると言われているのが『タルムード』という書物で、タルムードの中にはお金や人生に関する哲学を学べる小噺が多数存在します。
今回はタルムードの中から『手と足と目と口、一番偉いのは誰?』というお話を紹介します。
前回の『母鳥と3羽のヒナ』に続き、タルムードシリーズ第8弾です。
なお、タルムードはヘブライ語で書かれたもののみを聖典としているため、他の言語に翻訳されたものについては一部誤訳が入っている可能性があります。
今回の記事では日本語に翻訳された書籍である「ユダヤ人の成功哲学『タルムード』金言集」をもとに要約解説していきます。
あらかじめご了承ください。
手と足と目と口、一番偉いのは誰?
人間には、手、足、目、耳、鼻の穴など重要なものは2つある。
なのに口は一つしかないのはなぜなのかと、ユダヤ人は古来から議論してきたが答えは出ていなかった。
そんな中ある国の王様が病に侵された。
どんな医者も治すことができず、王様はどんどん衰弱していくばかりであった。
そんな折にある祈祷師が通りかかって王様を診断をしこう言った。
「この病気を治すには、世界でもっとも手に入りにくいと言われている母ライオンのミルクを飲ませるしかありません。」
そこで母ライオンのミルクをとってきたものにはどんな褒美でも取らせるとのお触れが出された。
とはいえ母ライオンは子供を守ろうとして近づくものを皆噛み殺してしまう。
褒美は魅了的だったが、国中の人間は恐がってミルクなど取りにいけなかった。
しかし、村に住んでいた一人の若者がこれに挑んだ。
彼の目と耳が相談し、一頭の母ライオンを見つけた。
色々と考えた末に、母ライオンに羊の肉を与えて一歩近づき、また次の日の羊の肉を与えて近づくというのを繰り返す方法を思いついた。
そして若者はこの方法を勇気を奮って実行に移した。
何日も繰り返して、両手、両足、両目は母ライオンの乳房のところにまで近づいた。
若者はついにライオンの警戒心をとき、母ライオンの温かで新鮮なミルクをとることに成功した。
ところがいざ王様のところにミルクを持っていこうとした時、両手と両足と両目がケンカを始めた。
両目は、
「このオレが母ライオンまでの距離を正確に把握して一歩一歩近づくことができたんだ。だからオレが一番たくさん褒美をもらうべきだ。」
両足は、
「オレがいたからこそライオンが襲ってきても逃げることができた。一番大切な役割だし一歩一歩近づいたのもオレだ。だからオレが一番たくさん褒美をもらうべきだ。」
両手は、
「なにをいう、母ライオンのミルクを搾ったのはこのオレだ。それこそ一番大事な役割だ。」
とそれぞれ主張している。
3人の論争を聞いていて、今まで何も主張しなかった口が初めて口を開いた。
「両手も両足も両目もいっていることが全然正しくない。このオレこそが一番たくさん褒美をもらうべきだ。」
これには両手も両足も両目も大反論する。
「「「何を言っているんだ。お前は何もしていないじゃないか!したがってお前の褒美は何もないぞ!」」」
ところがミルクを王様に届けた時に、口が勝手に騒ぎ出した。
「王様、ここに犬のミルクを持ってきました。これで王様の病気はただちに全快するはずです。」
この言葉に王様は大激怒。
「母ライオンのミルクを持ってこいと言ったはずだ。なのに犬のミルクを持ってくるとは何事か。ふざけたヤツだ。即刻処刑せよ。」
両手、両足、両目は王様の見幕に震え上がり口に対して、
「おい、頼むから本当のことを言ってくれ。」
と懇願した。
「それみろ、口こそが一番重要なのだ。褒美は全部オレがもらうぞ。いいな。」
両手、両足、両目は渋々頷くしかなかった。
手と足と目と口、一番偉いのは誰?から学ぶこと
この説話は言葉の重要性を説いたものです。
口は最大の武器であり、ユダヤ人は口論や議論や質問は人生を豊かにするものと考えるそう。
論理を考え、相手を説得するスキルを磨くことはビジネスにおいても最重要の課題とされている。
いかにして言葉でそのものの魅力を伝えることができるかや、自分の意見を相手にわかりやすく伝えるなど、仕事だけでなく人生において大切となってくるため、常に訓練していきたいと思わせる説話です。
ということで今回タルムードシリーズ第8弾となる『手と足と目と口、一番偉いのは誰?』をご紹介しました。
「ユダヤ人の成功哲学『タルムード』金言集」には他にもお金や人生における物語がいくつか紹介されています。
どれもためになるものばかりなので、ぜひ読んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました!